この記事では、1級「2次」試験の出題傾向をまとめたものです。
2016年以降の1級2次試験の公式過去問大集を分析して、傾向を調べてみました。2020年改訂以降の最近の動向に対応しています。
新テキストの改訂自体は2020年に行われましたが、同年の試験は、新旧テキストの移行措置期間として、ややイレギュラーな内容になっています。そのため、この記事では、内容が新テキストに完全に移行した、2021年以降の試験に共通している特徴を「2020改訂以降の傾向」として紹介しています。
全体の傾向
問題の構成
2次試験は、例年 4~5つほどの大問で構成されるのが一般的です。各大問につき、それぞれ5~10ほどの小問が設定されます。
一般的な問題構成
以下は 2020改訂以降に よく出題されている構成です。年によって変動する可能性がありますので、あくまで目安として考えましょう。
- 大問1:マンセル表色系の等色相面に関する問題 ※切り貼りアリ
- 大問2:XYZ表色系に関する問題
- 大問3:配色問題 A ※切り貼りアリ
- 大問4:配色問題 B ※切り貼りアリ
- 大問5:景観色彩に関する問題
必要とされる知識(出題範囲)
1級2次試験の出題内容は、2~3級範囲で学習した内容がメインとなり、そこに少し 1級範囲の項目が入ってくる感じです。
1級範囲としては、XYZ表色系と環境色彩分野からの出題が近年の傾向です。※環境色彩は2級範囲も含む
また、配色問題は、2.3級の内容がメインになるため、必要とされる知識自体は特に難しいものではありません。
ただ 問題文が特殊かつ難解(耳慣れない言葉)なため、これに慣れるまでに少し時間がかかると思います。
回答の形式
1級1次試験までの「4択 マークシート」形式とは異なり、2次試験は、設問ごとに回答を記述する方式になっています。
また、記述による回答とは別に「カラーカードの切り貼り」が求められる問題もあります
記述問題
「XYZ表色系」や「景観色彩」問題の一部で、記述による回答が必要になります。
記述問題は「漢字4文字で」、「カタカナ5文字で」のように 文字数まで指定されるケースが一般的です。
「答えは分かっているけど、漢字が書けない・・・」で、不正解になってしまうのはもったいないので、不安な方は ノートなどに漢字の書き取り練習もしておきましょう。
カラーカードの切り貼り
「等色相面の問題」と「配色問題」では、記述による回答(マンセル値、トーン記号)の他に、「配色カード199a(以下 カラーカード)」の切貼り作業が必要になります。※等色相面の問題では問題用紙上に印刷されたカラーチップを使用
カードの貼り付けも独立した採点対象になっていますが、これは 実技の美しさを問うものではありません。
正しいカードが貼り付けられていれば、多少 貼り付けが汚くても採点に影響がないとされています。
合格ラインと配点
2次試験の合格ラインは、毎年変動はあるものの、おおよそ140~150点(200点満点中)付近になることが多いようです。
また、配点に関しても、毎年 若干の変動はありますが、1問につき4~5点ほどになるケースが一般的です。
特に気を付けておきたいのが、カードの切り貼りをともなう「配色問題」です。
配色問題では、正解となる色の「1. トーン記号の記載」と、それに該当する「2. カードの切り貼り」のそれぞれで、別に加点されます。
このため、色の選択(トーン記号)を間違えてしまうと、芋づる式に2問分が不正解になってしまいます。これは、点数にすると8~10点ほどに相当するため 注意が必要です。
大問ごとの傾向
以下では 大問ごとに出題の傾向をまとめています。各問題を解くために必要となる知識は別の記事にまとめていますので、あわせてそちらもお読みください。
大問1:等色相面に関する問題
大問1は、伝統的に マンセル表色系の等色相面に関する出題が行われます(以下、等色相面の問題)。
毎回、「視感測色によって適切な位置にカラーチップを貼る問題」と「マンセル値を答える問題」が出題されています。
視感測色する問題
こちらの問題では、問題用紙上に印刷されたカラーチップを切り取って、等色相面の適切な場所に貼り付けることが求められます。
色の判別力(色相・彩度・明度に対する感度)が問われる問題です。知識ではなく「感覚」が求められる問題ですね。
特に難しい知識は必要ありませんが、事前対策が難しいのが難点です古本で、公式過去問題集を何冊か買って確認するのもおすすめです。
マンセル値を答える問題
等色相面上の指定された箇所のマンセル値を答える問題です。
解答に必要な「色相・明度・彩度」の情報は、等色相面上に記載されているため、色を見てマンセル値を推測する必要はありません。
マンセル値の表記法(規則)さえ理解できていれば 簡単に解答できます。
こちらは、いわば「サービス問題」なので、確実に正解しておきたいポイントです。
大問2:XYZ表色系
過去には、配色問題が出題されることが多かった大問2ですが(※1)、近年は XYZ表色系に関する問題が出題される傾向にあります。
※1:過去には問題2.3.4と配色問題が3つになることも多くありました
こちらは、1級1次試験と同じレベルの穴埋め問題になることが多く、(1次試験の内容が理解できていれば)特に難しい内容ではありません。
受験生の多くは、11月に1級範囲を受験したばかりだと思いますので、その「復習」のつもりでテキストを読み返しておきましょう。
たまたま 直近2年連続で、XYZ表色系の問題が出ましたが、2024年以降も XYZ表色系で固定されるかどうかは(まだデータが少ないため)わかりません。
大問3/大問4:配色問題
大問3.4では、主に 配色に関する問題が出題されます。※過去には大問2.3.4が配色問題のケースもありました
形式にはいくつかのバリエーションはありますが、対象物のデザインに対して配色案(3~4色で構成)を考えさせるものが一般的です。
配色・・・といっても、個人の感覚・センスで任意の色を選ぶわけではなく、設問が指定する条件に合致する色をPCCSの中から選んでいくことになります。
配色の対象は「お店のロゴ」や「ファッション」「インテリア」など年によって異なりますが、求められる知識はほぼ共通しています。
解答は トーン記号の記載の他、それに対応するをカラーカードの切り貼りも必要です。
気を付けたいポイント
トーン記号の記載と、カードの切り貼りは それぞれ別に4~5点ほど配点されるため、1問間違えてしまうと 一気に8~10点を失ってしまうことになります。
このため、2次試験合格のポイントは、この配色問題をいかに攻略するかにかかっている、と言っても過言ではありません。
大問5:景観色彩
2次試験の最終問題は「景観色彩」分野から出題されることが多くなっています。
2020改訂以降は、基本的な知識を問う 穴埋め式問題と、明度・彩度の制限事項(色彩基準)を読み解く問題が出題されています。
特に難しい知識が必要とされるわけではないため、1.2級の公式テキストを読み込んでおけば、十分に対応可能かと思います。
こちらも、大問1と並んで サービス問題に近い内容なので、確実に正解しておきたいところです。
そのほか
(今のところ)2020改訂以降に出題されたケースがないものの、過去には何度か出題されたものもあります。
2020改訂以降の出題傾向については、まだデータが少ないため、比較的近年に出題のあったものも合せておさえておきましょう。
インテリアスタイル
2級範囲のインテリアの写真をみて、そのスタイル (ナチュラル、オーソドクスなど)を選択したり、適切な配色傾向などを答えさせる問題です。
近年では、新・旧テキストの移行措置期間にあたる2020年の2次試験で出題された事例があります。
ファッションカラーの変遷
配色問題の色の特定において「ファッションの変遷」分野の知識が必要とされたケースがあります。
コメント