従来は2級範囲に含まれていた「JIS系統色名の命名規則」は公式テキスト 2020年改定版から「資料」扱いになり、試験範囲から外れました。そのため2020年度以降は出題されることはないと思いますが資料として記事をそのまま保存しています。
こんにちは、1級 色彩コーディネーターの石川です(プロフィール)。
2級の学習でつまづくポイントの一つが「JISの系統色名」の項目ではないかと思います(2級公式テキストp28~)。
私自身、受験の際に内容がイマイチよく理解できずに苦労しましたので、独学受験生の皆さんにむけて 少し掘り下げて解説をしてみたいと思います。
系統色名とは?
JISでは、10個の基本色名が規定されていますが、それだけでは指し示すことができる色の数が限られてしまいます。
- JISの基本色名:赤・黄赤・黄・黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫・赤紫
そこで、基本色名の頭に「修飾語」を加えることで、色をより細やかに分類できるようにしています。
この「修飾語+基本色名」で表される色のことを「系統色名」と呼んでいます。
系統色名で用いられる修飾語は、あらかじめ語句が決められており、また基本色との組み合わせ方に関してルールがあります。
実際の試験においては この命名のルールの正誤を問う問題がよく出題されます。
以下で、そのルールを確認していきましょう。
「有彩色」の命名ルール
有彩色と無彩色では 命名のルールが異なりますので、それぞれを個別に説明します。
まずは、有彩色の命名ルールを確認していきましょう。
有彩色の系統色名は、基本色名の頭に 2つの修飾語をくっつけた形になります。
修飾語に 使用できる語句はあらかじめ決められています。
有彩色の系統色名は、上図の語句を組み合わせて 作られます。
例えば、慣用色 ワインレッド を表す系統色名は「こい 紫みの 赤」となります。
ただし、各語句を適当につなぎ合わせてよいわけではなく、その組み合わせに関していくつかルールが設定されています。
【ルール1】修飾語には順番がある
修飾語には「明度・彩度の修飾語」と「色相の修飾語」の2種類がありますが、これらには順番が決められています。
有彩色の場合は、左から以下のような順番になります。
ですから、例えば以下のような系統色名は ありそうですが存在しません。
- 緑みの こい 青
- 黄みの つよい 赤
いずれも「色相の修飾語 → 明度・彩度の修飾語 → 基本色名」の順番になってしまっていますね。
ちなみに、無彩色の場合はこの順番が異なりますので、混同しないように注意しましょう(後述)。
【ルール2】2文字の基本色名には「色相の修飾語」は付けられない
基本色のうち 漢字2文字で表されるもの(黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫)には「色相の修飾語」は付けられません。
逆に言うと「色相の修飾語」が付けられるのは「赤・黄・緑・青・紫」だけだということです。※下図の赤線の組み合わせはありえません。
ですから、例えば以下のような系統色名は存在しません。
- 明るい 赤みの 黄赤
- 暗い 青みの 青紫
漢字2文字の基本色名の頭につくのは「明度・彩度の修飾語」だけになります。
【ルール3】「色相の修飾語」と組み合わせ可能な基本色が決まっている
ルール2で示したように、有彩色において「色相の修飾語」がつけられる基本色名は「赤・黄・緑・青・紫」だけになります。
ただし、それら5色に対しても 組み合わせられるものと、そうでないものがあります。
「基本色名」の前につけることができる「色相の修飾語」は、その基本色が色相環上で隣り合っている2色の修飾語になります。
例えば、「赤」という基本色名の前につけられるのは、「赤」と色相環上で隣り合う「紫み」と「黄み」の2つになります。 また同様に「黄」という基本色名の前につけられるのは、「黄」と色相環上で隣り合う「赤み」と「緑み」の2つになります。※下図参照
※上図の「色相の修飾語」は説明の便宜上、「紫みの」「赤みの」の項目を追加しています。
なので 例えば以下のような名前は存在しません。
- 赤みの緑
- 黄みの青
このルールは色相環の順番が頭に入っていないと覚えるのが無茶苦茶大変です。まずは、色相環をしっかり把握しておきましょう。
【ルール4】「~みの」がダブった場合には 「帯びた」を加える
もうここまでくると「こんなこと全部 暗記する必要あんのか?」と投げ出したい気持ちになると思いますが、落ち着いて続けましょう。
「明度・彩度の修飾語」である「明るい灰みの・灰みの・暗い灰みの」という3つの語句には、「~みの」という言葉が含まれています。
この3語を「色彩の修飾語」と組み合わせると、例えば「灰みの 赤みの 黄」のように、「みの」という言葉がダブってしまいます。
私なんかは「別にこれでいいじゃん」と思いますが、JISの偉い方はそう思わないらしく、この場合は「色彩の修飾語」側に「~を帯びた」を加えなくてはいけないルールになっています。
つまり 以下のような感じです。
- 「灰みの 赤みの 黄」→「灰みの 赤みを帯びた 黄」
- 「明るい灰みの 青みの 紫」 → 「明るい灰みの 青みを帯びた 紫」
ここで注意したいのは「~帯びた」を加えるのは、「色彩の修飾語」の側だということです。
以下は ありがちな間違いの例です。
- 灰みを帯びた 赤みの 黄
- 明るい灰みを帯びた 青みの 紫
いずれも「明度・彩度の修飾語」側に「~を帯びた」を加えてしまっているため誤りになります。
「無彩色」の命名ルール
続いて、無彩色の命名ルールを確認していきましょう。
無彩色の系統色名も、基本的には「修飾語+基本色名」の組み合わせで作成されます。
ただし、修飾語の種類と順番が有彩色の場合とは異なっています。
まず 「色相の修飾語」が頭にきて、続いて「明度に関する修飾語」、最後に「基本色名」という順番になります。
こちらも修飾語に使用できる語句はあらかじめ決められています。
無彩色だというのに、色相に関する修飾語が大量に用意されていますね。
無彩色の場合も、有彩色同様に、語句同士の組み合わせにルールがあります。
【ルール5】「明度に関する修飾語」がつくのは「灰色」だけ
「明度に関する修飾語」は「灰色」にしかつきません。
なので 例えば以下のような名前は存在しません。
- 赤みの うすい 白
- 青紫みの 暗い 黒
これは 考えてみると単純な話で、そもそも 灰色のうちで最も明るいものが「白」、最も暗いものが「黒」なので、これらには修飾語をつける必要がないわけですね。
基本色名の命名ルールは以上です。
間違いやすいポイント
以上を踏まえて、実際の検定試験で出題されやすい、間違いやすいポイントを確認していきましょう。
ポイント1:「色相の修飾語」の位置に注意
系統色名は基本的に「修飾語+基本色名」の組み合わせで作られていますが、有彩色と無彩色では修飾語の種類と順番が異なっています。
- 有彩色・・・「明度・彩度の修飾語」+「色相の修飾語」+「基本色名」
- 無彩色・・・「色相の修飾語」+「明度の修飾語」+「基本色名」
実際の検定試験では、この順番の正誤を問う問題がよく出題されます。
以下は、ありそうで存在しない間違った系統色名の例ですが、どこが間違っているか分かりますか?
- うすい 赤みの 灰色
- 黄みの 明るい 赤
- 明るい灰みの 白
間違いの理由は「(1) うすい 赤みの 灰色」は、「明度・彩度の修飾語」と「色相の修飾語」の順番が異なっているため×。
「(2) 黄みの 明るい 赤」も同じく、修飾語の順番が異なっているため×。
「(3) 明るい灰みの 白」は、有彩色の修飾語が、無彩色に対して使われているため×となります。
ポイント2:「~を帯びた」の位置に注意
有彩色、無彩色ともに「~みを帯びた」という文字が含まれる修飾語があります(※ルール4を参照)。
以下は、ありそうで存在しない間違った系統色名の例ですが、どこが間違っているか分かりますか?
- 紫みの赤みを帯びた 灰色
- 赤みを帯びた黄みの 赤
- 明るい灰みを帯びた 黄みの 赤
間違いの理由は「(1) 紫みの赤みを帯びた 灰色 」の場合、「紫みの赤みを帯びた」という修飾語自体が存在しないため×になります。
正しくは「紫みを帯びた赤みの」ような語句になります。
「(2) 赤みを帯びた黄みの 赤」は、無彩色の修飾語を、有彩色に使っているため×。
「(3) 明るい灰みを帯びた 黄みの 赤」は、非常に間違いやすいので、特に注意です。
ルール4で紹介したように、有彩色の修飾語で「~みの」がダブった場合に、片方に「~を帯びた」を加えることになっています。
この時「~みを帯びた」という語句が入るのは「色相の修飾語」だけです。
「明るい灰み」というのは「明度・彩度の修飾語」ですから「明るい灰みを帯びた~」という形にはなりません。正しくは「明るい灰みの 黄みを帯びた 赤」のような形になります。
こうした間違いのもとは、おそらく 無彩色の「紫みを帯びた赤みの 白」といった系統色名を見て、「そうか、修飾語の頭の方に”~を帯びた”をつければいいのか」と覚えてしまったことにあると思います。
修飾語の頭の方につけるかどうか ではなく「色相の修飾語につける」と覚えておきましょう。
各項目の暗記サポート
実際の試験においては、各修飾語をある程度覚えておく必要があります。
そこで最後に 私流の系統色名の修飾語と基本色名の覚え方を紹介しておきます。
基本色名の覚え方
JISの基本色名はマンセルの基本色とも重なるため、系統色名に関する問題以外にも必須の知識です。
ぜひとも覚えておきましょう。
この時、頭から「赤・黄赤・黄・黄緑~」と10個を順番に覚えていくよりも、「ベースの5色 + 間の5色」という形で覚えておくと 色々と便利だと思います。
- まずベースの5色「赤・黄・緑・青・紫」を覚える
- 次にその間に入る5色「黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫」を覚える
(1)を覚えてしまえば、(2)は「その間に入る色」になるので、直感的に覚えやすいと思います。
「色相 及び 彩度に関する修飾語」の覚え方
有彩色の修飾語のひとつ「色相 及び 彩度に関する修飾語」の覚え方です。
「色相・彩度の修飾語」とは PCCSでいうところの「トーン」にあたるものです。なので、PCCSのトーン図を頭に思い浮かべると、覚えやすくなると思います(※1)。
※1:PCCSのトーンは、色彩検定を受検する上では必須の知識ですから、とにかく覚えておかなければ お話になりません。
有彩色の「色相に関する修飾語」は、基本の5色に「~みの」がついたものです。なので、基本の5色「赤・黄・緑・青・紫」を覚えておけば大丈夫です。
無彩色の「色相に関する修飾語」は 14個もありますが、中身は意外と単純です。
- 基本の10色に「~みの」が付いたもの・・・10個
- 「~みを帯びた~」という名前のもの・・・4個
このうち(1)に関しては、基本の10色を覚えておけば良いので 簡単です。
問題は(2)の方で、以下の4つの語句がそれです。
- (A) 紫みを帯びた赤みの
- (B) 黄みを帯びた赤みの
- (C) 赤みを帯びた黄みの
- (D) 緑みを帯びた黄みの
一見、長ったらしくて複雑そうですが、よく見てみると「赤みの」と「黄みの」がベースになっていることが分かります。
- 「赤みの」ベース:基本5色「赤」が色相環上で隣り合う色「紫」と「黄」が含まれている
- 「黄みの」ベース:基本5色「黄」が色相環上で隣り合う色「赤」と「緑」が含まれている
このように分解していくと 覚えやすくなると思います。
無彩色に使われる「明度に関する修飾語」は、「うすい・明るい・中位の・暗い」の4つです。
以下のように語呂あわせで覚えましょう。
まとめ
系統色名の問題は一見複雑にみえますが、ルールさえ覚えてしまえば 意外と試験で問われる問題はものすごく単純です。
よく出題されるポイントなので、しっかり学習しておきましょう。
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